History

Forstnerは1920年頃、ウィリアム・フォースナーによってニュージャージー州で「Forstner Chain Corporation」として創業しました。初期には装飾ジュエリーやウォッチブレスレットを手がけていました。

Forstner Chain Corporation

純粋なジュエリー製品も製造していましたが、同社の主軸はあくまで時計用アクセサリー、すなわちチェーン、ストラップ、ブレスレットにありました。

初期のウォッチブレスレット

Komfitバンドの誕生

Forstnerの進路を決定づけたのは1939年でした。この年、同社は後に「Komfit」と名付けられる画期的なストラップ構造を発明します。当時の彼らは知る由もありませんでしたが、この設計は20世紀を代表するいくつもの歴史的瞬間に立ち会うことになります。

ヴィンテージのKomfitバンド

米国特許第2,213,096号および第2,229,677号をはじめとする複数の特許出願に記されているとおり、Forstnerが発明したのは「ブレスレットの長さを自在に変更できる、伸縮ブレスレットの新しい構造」であり、「操作しやすい部品を瞬時に着脱・分離でき、ブレスレットの取り外しと装着を容易にする構造」でした。

Komfitの特許図面

その発想を簡潔に言えば、バックルとクラスプをストラップの長さ方向に沿って動かし、ぴったりの位置で固定できるようにする、というものです。この独自のクラスプ機構により、ブレスレットはごく細かい単位でサイズ調整が可能になりました。この仕組みは、現在のKomfit復刻版にも受け継がれています。

こうして「Komfit」が誕生しました。Forstnerはこの発明を軸に製品群を展開し、手首にもたらす快適さ(comfort)を表す名として「Komfit」を掲げたのです。

1940年代のForstner Komfit広告
1940年代のForstner Komfit広告

その他の重要な設計

歴史的に意義のあるForstnerの設計は、Komfitだけではありません。ほぼ同時期の1940年代頃、Forstnerは名作「Bonklip」ブレスレットの独自版を製造し、米国で特許も取得しています。ラダースタイルのこのブレスレットは、固定ラグバーに取り付けられることから、ミリタリーウォッチで 広く用いられました。軍支給の時計では、不意の落下を防ぐために固定バーが一般的に採用されており、「Bonklip」スタイルは固定バーに対応する数少ない金属ブレスレットの選択肢だったのです。

IWC Mark XIに供給されたBonklipブレスレット
IWC Mark XIに供給されたBonklipタイプのブレスレット

このスタイル自体は、数年前から英国と米国で作られていました。しかしForstnerは1944年出願の特許に示されるとおり、独自の設計を世に出します。「Komfit」と「Bonklip」はいずれも同じ原理に基づいており、細かな単位で調整することで、ほぼ誰の手首にも最適なフィットをもたらすものでした。

Forstner製Bonklipスタイルブレスレット

ForstnerのBonklipスタイルが他社製と異なっていたのは、リンクに噛み合ってロックするプッシュボタン式クラスプを採用していた点です。他社の多くはロック機構のないクリップ式で、固定力の面で劣っていました。

OEMサプライヤーとしてのJB

自社ブランドでの製造に加え、Forstnerの後継であるJacoby Bender(JB)は、歴史に名を残す数々の名機にブレスレットを供給するOEMサプライヤーとしても豊かな実績を持っていました。Forstnerは、この系譜に敬意を表し、伝統的なクラスプに象徴的なJBの三角ロゴを刻んでいます。

JB製ブレスレットが装着されたブランドと時計の一例をご紹介します。

  • ロレックス — デイトナ以前の6238、GMT 1675、デイトジャスト、オイスターパーペチュアルなど(ジュビリー、ウーブンメッシュ)
  • オメガ — スピードマスター、シーマスター(フラットリンク、スラット、ブリック、オイスタースタイルほか多数)
  • ジャガー・ルクルト — ブリックスタイル
  • ロンジン — ビーズ・オブ・ライスほか
  • ユニバーサル・ジュネーブ ポールルーター — ブリックスタイル、ヘリンボーン
  • ブローバ アキュトロン(アストロノートを含む) — バレット、フラットリンクほか
  • ハミルトン — プレジデント/1450スタイル、オイスタースタイル
  • ゾディアック シーウルフ — ブリック、オイスタースタイル
  • エテルナ エテルナマチック — ミリタリータイプKomfitに近いスラットスタイル
  • タイタス — ミリタリータイプKomfitに近い意匠のブレスレット
  • ワイラー — ミリタリータイプKomfitに近いスラットスタイル

宇宙開発計画とのつながり

NASAが有人宇宙飛行の標準支給時計としてオメガ スピードマスター プロフェッショナルを選定する以前、宇宙飛行士たちは自前の時計と、自前のウォッチバンドを使っていました。

初期の宇宙飛行士たち

宇宙開発の黎明期、一部の飛行士は自らオメガ スピードマスター プロフェッショナルを購入し、Komfit(あるいは後継のJacoby Benderが「JB Champion」として展開した同型)と組み合わせていました。工具なしで手早くサイズを変えられ、緊急時にはすぐ外せるというKomfitの利点は、彼らにとって自然な選択だったのです。マーキュリー計画当時の宇宙服の上からでも装着できました。

マーキュリー計画の飛行士たち

やがてこの組み合わせは、NASA全体に浸透していきます。

Komfitバンドはほどなくして飛行士たちの定番となりました。NASAの画像アーカイブには、Komfitバンドを着けた飛行士の写真が数多く残されています。

Komfitバンドを着用する宇宙飛行士

マーキュリー計画の時代、Komfitバンドは宇宙服の上から装着できたため、地上訓練でも宇宙空間でも、しばしばそのように着けられていました。

飛行士たちは、マーキュリー・アトラス8号と9号の2つのミッションでKomfitバンドを着用しました。実際、宇宙で最初のKomfitは、1962年10月3日のマーキュリー・アトラス8号で、宇宙で最初のオメガ「CK2998」とともに着用されたものです。

マーキュリー・アトラス8号 打ち上げ前点検
マーキュリー・アトラス8号 カプセル搭乗前の最終点検

Komfit、名を変える

1963年頃、ForstnerはJacoby-Benderに買収されます。同社は「Komfit」のスタイルを引き継ぎつつ、名称を「JB-Champion」へと改めました。

1964年、NASAは「ジェミニ計画およびアポロ計画の飛行士が使用する、極めて高い耐久性と精度を備えたクロノグラフ」を1機種選定するという、よく知られた作業に着手します。これは元NASA飛行乗員運用部長ドナルド・スレイトンによる調達要求書に記されたものです。

しかしその時点で、NASAはすでにKomfitメッシュスタイル(後のJB Champion)のブレスレットを使用していました。同じクロノグラフ調達要求書のなかで、JB Champion製「Komfit」スタイルのバンドを12本購入してもいるのです。

1964年9月21日付 スレイトン調達要求書
1964年9月21日付 元NASA飛行乗員運用部長ドナルド・スレイトンによる要求書

JB Champion版のKomfitメッシュスタイルは、その後ジェミニ計画とアポロ計画を通じて数々のミッションで宇宙へ運ばれました。ジェミニ計画では、少なくともジェミニ3号と10号で飛行しています。

ジェミニ3号カプセル搭乗前
ジェミニ3号カプセル搭乗前。Komfitメッシュスタイルを宇宙服の上から着用

アポロ計画では、アポロ10号、12号、14号、17号で飛行しました。

アポロ17号 飛行中
アポロ17号 飛行中。左手首にKomfitメッシュスタイルがはっきりと確認できる

そしてアポロ17号では、このバンドは月面でも着用されました。

アポロ17号 船外活動後
アポロ17号 船外活動後の写真。左手首のKomfitメッシュスタイルに注目

アポロ計画の後も、このバンドはスペースシャトルのミッションで折に触れて使われ続けました。しかしJacoby Benderが事業を畳むとともに、やがて時の流れのなかに埋もれていきます。そしてForstnerの再始動とともに、Forstner(そしてJacoby Bender)の豊かなカタログから、歴史的に正確なブレスレット群がふたたび世に送り出されることとなったのです。